三枚橋城・沼津城跡（さんまいばしじょう・ぬまづじょうあと）

永禄3年（1560年）、今川義元の桶狭間での敗北による今川氏の衰退は、諸国の諸大名による今川領への進入を招いた。西からは徳川氏、北からは武田氏が遠江、駿河に攻めてきた。また、東の北条氏も武田氏に対抗して駿河に進攻した。北条氏と武田氏は駿河中部から東部にかけて数度の戦いを繰り広げた。

この頃の武田氏の駿河における拠点の一つが三枚橋城であった。三枚橋城は現在の沼津の駅南部にあり、本丸を二の丸、三の丸、外郭が狩野川に面した東南部を除いて同心円上に囲む構造になっていた。築城時期については、「北条氏政書状」によると、天正7年（1579年）、武田勝頼が築城したとされている。

この三枚橋城と狩野川を挟んで対峙したのが、北条氏の戸倉城（清水町徳倉）で、武田氏との間で小競り合いが絶えなかったという。天正8年（1580年）には、武田氏と北条氏の水軍が内浦重須沖から千本浜沖の駿河湾で海戦を行っている。

このような武田氏の駿河における拠点であった三枚橋城も、天正10年（1582年）に武田勝頼・信勝父子が天目山で自害し武田氏が滅亡すると、同城は徳川氏に明け渡され、家康の子、松平忠吉とその後見役の松井忠次（松平康親）が入城した。

三枚橋城廃城後の沼津は、代官支配となったが、安永6年（1777年）水野忠友が2万石で沼津に城地を与えられ、ここに沼津水野藩が誕生する。

水野家は、享保10年（1725年）忠恒が江戸城内で刃傷事件を起こして領地が没収されたが、徳川家康の生母の家柄であったため、大叔父である忠穀（ただよし）によって名跡相続が許され7千石が与えられた。その子忠友は出世し、沼津の地に城地を与えられて大名に復帰した彼は、田沼意次と手を結び、側用人から若年寄、老中となり、3万石に加増された。

2代目の忠成（ただあきら）も老中、老中首座となり、さらに2万石加増された。忠成の政治は、田沼と似て賄賂が幅を利かせているとして「水の出てもとの田沼となりにけり」と批判されたが、11代将軍家斉のもとで化政文化の花が開いた時期でもある。

忠成の後は、忠義・忠武・忠良（ただなが）・忠寛・忠誠（ただのぶ）と続き、忠良の時はペリー来航の頃で、領地に伊豆の白浜・稲取が含まれていたので海防警備に明け暮れている。忠誠は再び老中になっているが、第2次長州征伐の途次で病死し、次の忠敬（ただのり）の時に明治維新になり、上総国菊間（千葉県市原市）に移封され、沼津は徳川宗家を継いだ徳川家達の府中藩の支配下に入ることになる。