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高尾山古墳(たかおさんこふん)

2024年6月25日更新

「高尾山古墳」が国史跡にふさわしい遺跡として答申されました

令和6年6月24日、国の文化審議会から文部科学大臣に『高尾山古墳』の国史跡指定が答申されました。今後は国の官報告示を経て正式に国史跡となります。沼津市の国史跡指定は興国寺城跡依頼、30年ぶりになります。これを記念してイベントを開催します。

高尾山古墳 地図

高尾山古墳は、沼津市東熊堂字北方地内に所在し、愛鷹山から南に延びる尾根(丘陵)の末端上に立地する、全長約62メートルの前方後方墳である。
古墳と判明する前までは、後方部の高まりには高尾山穂見神社が、前方部には熊野神社が鎮座していた。

都市計画道路の計画線上に位置していたことから、都市計画道路の建設事業の進捗に伴って、平成17年・19年に試掘調査が実施され、周溝の形状や出土遺物から、古墳時代前期における前方後方墳である可能性が高まった。神社移転に先立ち、東側隣地の発掘調査を行ったところ、周溝の形状から前方後方墳であることが確定した。そして、神社移転の後、発掘調査が平成20・21年度、追加調査が平成26年度に実施された。その結果、古墳の形状が前方後方墳で、規模は全長約62メートル(後方部約31メートル、前方部約31メートル、周溝幅8~9メートル程度、ただし南端は2メートル前後)であることが確認された。そして、墳丘は、尾根を旧石器時代の地層まで平坦に削平してから、黒色土を1メートル程度盛土し、その上に色調の異なる土を交互に突き固め4メートルほど盛土していることが判明した。

後方部上に造られた埋葬施設(主体部)では、掘り込んだ墓坑に木の棺を直接埋める「木棺直葬」を行っており、墓坑は南北約5メートル、東西約6メートルの長方形を呈する。墓坑内に埋められた木棺は、東西の平面形状が舟形を呈するいわゆる舟形木棺(東西幅約5.1メートル、南北幅約1.3メートル)である可能性が高い。木棺底面には朱(水銀朱)が敷かれている。主体部から出土した副葬品は、青銅鏡(破砕鏡・上方作系浮彫式獣帯鏡)1面、勾玉1点、鉄槍2点、ヤリガンナ1点、鉄鏃32点で、鏡と勾玉以外は、武器や工具などの鉄製品である。
埋葬者は、主体部から出土した鏡(破砕鏡)や塗布された朱(水銀朱)から、高い経済力と権力を有し、副葬品のうち、鉄槍・鉄鏃などの武具が大半を占めていることから、武人的性格が強い人物と想定される。

遺物は、主体部以外においても、土器などが大量に出土しており、特に古墳の周溝からは、この地域の土器である大廓1~4式が連綿と出土するとともに、東海西部系、北陸系、近江系などの他地域の土器が少量であるが含まれている状況が判明している。

高尾山古墳から出土した遺物のうち、主体部上(棺上)から出土した土器や主体部から出土した金属製品などは大廓3式期(西暦250年頃)のものと推測されるものの、古墳周溝から出土する土器は大廓1式期(西暦230年頃)から大廓4式期までのものが存在し、また墳丘内部の土器については概ね大廓1式期(西暦230年頃)に限られていることが判明した。このような状況から古墳の築造年代については平成26年度の段階では、古墳の築造が大廓1式期(西暦230年頃)で、埋葬が大廓3式期(西暦250年頃)とし、築造と埋葬に時間差が存在する可能性が検討されていた。しかし、近年改めて墳丘内の盛土構造と土器の出土状況を再検討した結果、墳丘内部で出土する土器は古墳築造前に当該地に存在した集落に伴うものである可能性が高いことが判明し、現在では古墳の築造と被葬者の埋葬年代について時間差はほとんどないものと推定され、古墳の築造時期については被葬者の埋葬時期である大廓Ⅲ式期かその少し前と結論付けられている。

これまでの古墳時代研究では、奈良県桜井市にある箸墓古墳の成立から古墳時代が始まるとし、その年代は西暦250年頃とされていることから、高尾山古墳は、箸墓古墳と同時期の古墳であるとともに、同時期に東日本で確認されている長野県松本市の弘法山古墳や千葉県木更津市の高部30・32号墳などとともに、古墳時代最初頭に東日本で成立した古墳(前方後方墳)の一つとして位置付けられる。このことは畿内に統一的王権が成立した時に東日本でも独自に古墳時代へ移行したことを示しており、高尾山古墳は当該期の日本における歴史を考える上で重要な遺跡である。

  • 高尾山古墳 北からみた古墳全景

    北からみた古墳全景

  • 高尾山古墳 真上からみた古墳全景

    真上からみた古墳全景

  • 高尾山古墳 出土した土器

    出土した土器

  • 高尾山古墳 副葬品(後漢鏡)

    副葬品(後漢鏡)

  • 高尾山古墳 埋葬施設(主体部)

    埋葬施設(主体部)

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